東日本ワンパック専門家相談（2011年4月30日～5月4日）

　東日本大震災後の2011年4月30日～5月4日、東北の被災地を回り、以下の参加者及び場所で、複数の専門家が一緒に被災者の相談を聞くワンパック相談を行いました。

＜参加者＞
原子力・放射線治療研究者2名、建築・住宅・震災復興・まちづくり・都市計画研究者5名、法社会学・住宅法研究者1名、内科・神経内科医師1名、建築士3名、都市計画コンサルタント1名、弁護士6名、税理士6名、不動産鑑定士6名、土地家屋調査士3名、司法書士2名、司法修習生1名（合計37名）

＜場所＞
2011年4月30日　岩手県釜石市　釜石市教育センター会議室
　　　　5月1日　岩手県陸前高田市　陸前高田小学校
　　　　5月2日　宮城県仙台市　宮城県司法書士会館
　　　　5月3日　福島県福島市　あずま運動公園内体育館
　　　　5月4日　福島県いわき市　消費生活センター

　相談は全部で76件にのぼり、相談内容も、相続関係、義援金・支援金関係、不動産関係、税金関系、原発被害関係、復興計画関係など多岐に渡りました。相談内容の詳細は後記のとおりです。

　なお、上記の相談のほか、2011年5月2日の午後には、仙台において、仙台の士業及び災害復興まちづくり支援機構の皆さんとの協議会も行いました。

相談内容

各相談における専門家の組み合わせと相談内容・回答等

専門家の組み合わせ	相談内容・回答等
まちづくり研究者、コンサル、弁護士	・従前区画整理の地籍更正未了の状態で被災、土地の境界がわからない この事案では、従前状態の復旧方法に関する弁護士的知識と、これから復興過程で進む大きなまちづくりの見通しとの両方の心配を一挙に解明できた。
まちづくり研究者、建築士、税理士、不動産鑑定士	・復興計画、土地買取制度要求、土地価格、融資制度 この事案は、すべて今後の復興に向けた制度の見通しであり、これまでの各被災地の経験を各専門家が話して、相談者の知識イメージを豊富にすることができた。
まちづくり研究者、弁護士、建築士	・建物流失、破壊、復興計画、瓦礫処理、他人所有物の自宅敷地内への流入処理 この事案では、個別の権利関係、建物の状況と、大きなまちづくり計画とが総合的に回答できた。
原子力研究者、医師、弁護士	・農作物の被曝量と風評被害、損害賠償 ・3歳の子どもの被曝量の考え方、損害賠償 ・慢性白血病への放射能の影響、損害賠償 この事案では、放射能の影響を正確に判断し、精神科医による心のケアの方向を出し、関連する法律問題を総合的に回答できた。
医師、弁護士	・原発避難による家庭崩壊の増幅と賠償 ・夫子の死と精神的安定方法、ボランティアによる土地占拠、医療機関不足 この事案では、家族を襲った巨大な不幸とその権利関係を解明した上で、精神科医師による精神安定化への道筋が示せた。
弁護士、土地家屋調査士、司法書士、建築士	・不等沈下、建物傾斜、登記調査 ・建築中建物の被災、万全建物提供義務、安全性 この事案では沈下・傾斜の技術判断、住めない場合の法律関係、登記処理が総合的に回答できた。
弁護士、税理士、鑑定士	・建物流失、相続、瓦礫処理、税控除 この事案では、相続、滅失権利関係の税控除、それらの評価が一挙に回答できた。
弁護士、税理士、司法書士	・建物流失、漁業収入補償共済、雑損控除、滅失登記 この事案では、税金、登記、ローン問題が総合的に回答できた。
弁護士、税理士、土地家屋調査士	・建物流失、登記関係調査、住宅ローンと連帯保証、税控除 この事例では、建物調査、税、連帯保証問題を一挙に解明できた。
弁護士、土地家屋調査士、司法書士	・建物流失、相続、登記調査と滅失登記 この事案では、権利関係、登記関係、建物調査を一挙に解明することができた。
弁護士、建築士	・危険度判定、半壊と借家権 ・液状化、全壊、手抜き工事、売主責任 ・自宅の隣家への倒れかかり、賠償 ・自宅の破壊で隣家の外車への被害、危険度判定 ・全壊家屋からの退去と敷金返還 ・借家での家具倒壊による床破壊と賠償義務 ・法面のズレ、境界での流水 この事案では、危険度判定の再調査の道筋を立て、それに関連する法律問題を総体的に回答できた。
弁護士、司法書士	・相続、義援金 ・車流失と保管責任、車ローン ・建物流失、遺言書、相続、滅失登記 ・建物全壊、生活再建支援金 ・原発避難で置いて来た家、車などの賠償、借上げ仮設の備品の所有権 この事案は典型的な権利解明であるが、法律関係と登記関係が総合的に回答できた。
税理士、司法書士	・不動産購入と権利証の喪失 ・大規模半壊と融資枠 この事案では、被災者が、同じ集落内で被災を免れた不動産を購入したいと考えた時の売主の本人確認、権利確認と、購入にまつわる税金問題であり、税理士と司法書士の享禄で論点は完全にクリアになった。
税理士、建築士	・建物流失、再建費用 この事案では、住宅再建費用の予測とその税金関係の算定がリアルにできた。
土地家屋調査士、建築士	・全壊、地盤、公費工事 この事案では、地盤の基本的説明、再建援助制度の阪神大震災事例での制度紹介などができた。