鳥取県中部地震の被災地視察(2016年11月3日)
鳥取県中部地震の被災地である鳥取県において、現地の士業団体に阪神・淡路大震災以降のノウハウをお伝えすると共に、鳥取県の災害対応部署との意見交換を行い、被災地の状況の視察を行いました。
<日 時> 2016年11月3日
<参加者> 11名(研究者、建築士、技術士、土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士)
視察概容
◆鳥取県土地家屋調査士会の先生方の先導で鳥取県庁
(鳥取県危機管理局副局長兼危機管理政策課より被災状況の説明)
◆倉吉市ボランティアセンター(上灘中央ボランティアセンター)の訪問。
◆倉吉市役所(庁舎が被災)の視察
◆倉吉白壁土蔵群
◆北栄町の家屋全壊の現場、北条オートキャンプ場の視察。
森川憲二・当機構代表委員による研修講義
【報告】 鳥取県中部地震の実状と対策の特徴
1.2016.10.21発生 最大震度6弱
住宅被害 全壊2棟、半壊3棟 (10/28現在)
一部半壊9,222棟(11/2現在、増加中)
他方応急危険度判定 危険(赤)265棟 等
宅地危険度判定 危険(赤)144件 等
災害救助法は、倉吉市、三朝市、湯梨浜町、北栄町の全域、1市3町に適用
2.避難所に避難している被災者
全県で4,480人 (10/26現在)
その後、減少 同201人 (11/2現在)
3.仮設住宅の代替施策
県は、現状、仮設住宅の建設ではなく、県営住宅、職員住宅の空区画の無償提供での対応(目的外使用)
○要件
①居住していた持家が、全壊、大規模半壊、又は半壊で解体することを余儀なくされた世帯(者)
②居住していた民間賃貸住宅の貸主が、修繕を断念する等、賃貸借契約が解除された世帯(者)又は解除される見込みの世帯(者)
③その他、従前の住宅に居住することが困難であると生活環境部長が決めた世帯(者)・・・③の弾力運用が望まれる
○支援内容
家賃・駐車場代を全額免除
敷金・連帯保証人不要
光熱水費、共益費等は自己負担
○入居期間は、1年間(期限付き)
1年後どうなるかは現在不祥
○自治体によっては、仮設住宅の建設を考慮しているところもあるようである
4.被災者の住宅再建支援について
○被災者生活再建支援法は、現在不適用
(10世帯以上の住宅全壊が発生した市町村等の要件があり、現状これを満たしていない)
災害救助法の適用を受けている市町は、同法施行令1条4号を受けた内閣府令2条により、災害が発生し、又は発生する恐れのある地域に所在する多数の者が避難して継続的に救助を必要とすること、被災者に対する食品、生活必需品の給付について、特定の補給方法を必要とする場合にあたるとして適用が認められている
○代替策としての国の制度に代わる鳥取県独自の制度の活用である
鳥取県被災者住宅再建支援条例による支援補助制度について
災害により県内で10戸以上の住宅が全壊したもの、その他被災地域の崩壊を招くとともに、市町村の財政を著しく圧迫する恐れのある重大な被害が生じたもので、知事が参加市町村に協議して、別に定める事業として、同条例に基づく支援を行なうことが決定されている
① 被災者住宅再建支援補助金
支援額 住宅を建設、購入する場合 187.5万円~300万円
補修する場合 30万円~200万円
損壊の程度、世帯人数により支援額が異なる国の制度にはない、一部損壊の場合にも補助があることに特徴(上限30万円)
② 被災者住宅修繕支援金
支援額 1~5万円 ①の対象外の世帯
【特徴】
① 国の被災者生活再建支援金制度の適用のない場合でも、今回の地震で、県独自の制度で、ほぼ同様の再建補助がされる
むしろ、一部損壊にも補助がある点、国の制度よりも良い
② 16年前の鳥取地震後に設けられた独自制度の適用であって、即応性あり
鳥取県の被災者生活支援制度は、むしろ国の制度の原点となった先駆的役割りを有するもので、これをふまえて国の制度創設にいたった歴史がある
③ 財源について、予め将来の災害に備えて、鳥取県が県下市町村の参加を得て、条例に基金制度を規定して資金の積立てを行なってきた
災害発生後に復興基金による支援をした自治体は多いが、財源を将来に備え備蓄してきた画期的制度で、今後、他の災害でも参照されるべき制度
また、県は基金制度に国からの助成を期待すると位置づけていることも注目される